一寸の狂い無く刻まれる時計の音に、それより少し高い金属音が混じる。
なんでもない日常の、いちばん憂鬱で悲しい時間。
この時間ほど私を苦しめるものは無い。
寸分の狂いも無く進む時が、私の心臓を刻む。
それよりもゆっくりで不正確な金属音が、私の頭に突き刺さる。
回る螺子が、私のこころを壊すのだ。
何度、螺子を外してしまおうと思っただろうか。
螺子を外してしまえば、私はこの時間から開放される。
時が私の心臓を刻むことも、金属音が頭を突き刺すことも無いのに。
それなのに、螺子は未だ私の背に留まっている。
この螺子が外された事は一度も無い。外せない。外せるわけが無いのだ。

この螺子こそが、私とあの人を繋ぐ扉の『鍵』なのだから―――。





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